IoTで農業?スマート農業とかアグリテックとかいうけど、どういうもの?

IoTの活用分野としてもっとも期待されている分野の一つが農業です。なぜなら農業分野においてIoTによって解決できると期待されているものが切実で待望されているものだからです。これがどういったものであるかを説明します。

IoTと農業

温度管理システム,Iot 温度センサー

IoTとは、「Internet of Things」の略語で日本語では「モノのインターネット」と呼ばれています。従来はインターネットへの接続機能を備えていなかった様々な機器をつなげることを意味しています。この適用分野として農業が注目されています。IoTは構成要素の一つで、全体としてスマート農業と呼ばれることが多いです。
スマート農業では、圃場のデータをカメラ経由でチェックしたり、畑のセンサーが取得した情報をスマートフォンで確認し水や肥料などを提供する機械をコントロールするといった活用法が進められています。

農林水産業はスマート農業を「ロボット技術やICT等の先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする新たな農業」と定義しています。
海外では「スマートアグリカルチャー」「スマートアグリ」「アグテック」「アグリテック」などとも呼ばれています。

かつて農業の分野では、鍬や鋤による手作業や牛馬を用いた農耕が伝統的に営まれてきました。近代以降は耕運機やトラクターと行った機械へと力仕事の担いては変わっていき、収穫もコンバインやコンベアーを使った自動化や省力化は進みました。しかし人間が判断するべき分野はまだ多く、この部分をスマート農業が担っていくと言われています。
IoTの特質として従来はインターネットへの接続が考えられていなかった分野の機器をインターネットに接続するということがありますので、今までITやICTとあまり縁がないと思われがちだった農業分野だからこそ、この可能性が大きく注目されています。

スマート農業のメリットは下記のようなものが期待されています。

省力化による規模拡大や収量拡大

人が操作しなくても自動で作業するロボットや、人が見て回らなくてもデータを撮ってくれるセンサーなどにより、今まで人間がやっていたことで面積的、時間的な限界があったものが、その制約がなくなって規模の拡大を図れるようになります。また同時に複数の作業を行えることから生産量の増加も期待できます。

肉体的負担の軽減

農業はきつい仕事というイメージがあります。しかしスマート農業による作業の自動化はきつい作業や危険な作業から人間を解放してくれると期待されています。

後継者問題の解決

農業はきつい仕事ということの結果ではありますが、農業の担い手の高齢化と後継者不足が問題となっています。しかし農業のノウハウや技術をデータ化することで経験の少ない人でも農作業が可能になり、だれでも品質や収穫性の高い農作物を栽培できるようになります。

スマート農業の主な事例

温度管理システム,Iot 温度センサー

スマート農業にはどのようなものがあるでしょうか。その例を見ていきましょう。

圃場の状況を撮影したりセンサーで計測したりして集めたデータを解析し、効率的に栽培をする農業が進められています。
圃場の写真を解析することで生育状況や病気がわかり、また日照量などのデータや炭酸ガス濃度の量から野菜の収穫可能時期を予測するなどします。

また、今までの気象データを解析していくことで栽培に係るリスクの予測も可能になります。過去のデータから生育の傾向を導き気象データを結びつけたりします。人間が天候をコントロールすることはできませんが、今までのデータとの総関係を予測したり、不足している日照量や水分を他の方法で補うなどができます。そして、この作業をロボット化することで自動化することもできます。

農薬散布の分野ではドローンの活用が注目を集めています。ドローンによる圃場の画像から生育状況を判断したり、病害虫の場所を検知して対応するというものです。検出した脳害虫のいるところにだけピンポイントで農薬を散布し、農薬散布の労力軽減とコスト削減と自然環境や農作物への影響を必要最小限に抑えます。

スマート農業の課題

温度管理システム,Iot 温度センサー

いい事ずくめに思えるスマート農業ですが、もちろんその課題もあります。

個々の機器のばらつき

IoT機器やドローンやロボットはメーカーごとに違いのある製品であるため、WindowsやUnicodeが普及する前のPCと同じでソフトウェアやデータの形式がまだ標準化されていません。農業というものが長期的な視点で運営されるものである以上、機械やデータもそれに合わせたタイムスパンでの保存や管理、そして移行が必要になります。しかしまだ駆け出しの段階であるために数十年後のデータ保存まで考えられているのかというと難しいところがあり、各メーカーやベンダーも市場シェア獲得のための囲い込みに走りがちなところがあります。

初期コストがかかる

導入にあたっての初期コストが従来の農機具と比べて割高です。農業は世界的な大産業ですので将来的には普及による大量生産で単位コストは低減すると期待できますが、現在ではまだ普及過程にあるとは言え世界の全農業と比べるとパイロット段階であり初期ロットの割高さを受け入れなければならないところがあります。
また、活用が始まったばかりの分野なので費用対効果の予測が立てにくく返済の不確実性が大きいために資金調達に難がでることがあります。

実施者の不足と負担増

農業従事者は高齢化が問題となっていますので、こうしたスマート機器をすぐに活用できる人が少ないという現状があります。またこうした機器の導入のためには金銭的にも時間的にも技術的にも負担が増えるということでもあり、今までの農具を使うよりもさらに覚えることが増えるという問題が発生します。

課題の解決に向けて

温度管理システム,Iot 温度センサー

スマート農業でできることとその課題を見ていくと、これは1980年代から1990年代にかけてあたりの「パソコン」の普及と同じ状況であるということが言えます。まだWindowsもインターネットもなかったころに「OA化」のためにオフィスにパソコンを導入しようとしていたころの人々の期待と課題と、単語を変えるだけでおそらく同じ文章になります。
したがって課題解決は現場レベルでは当時と同じことをするのが良いことになります。それは具体的には下記のようなものになります。

後方互換性

その当時史上を制覇したのはMicrosoft社のWindows95でした。当時は特に使い勝手に置いてAppleのマッキントッシュと、設計レベルにおいてUNIXと比較してWindowsはあまり格好の良くないOSと思われていましたが、結局最後の勝者はWindowsでした。多くのビジネスユーザがMicrosoftを支持したのです。その理由は後方互換性でした。農業は長期的な視点を必要とすると書きましたがそれは会社でも同じで、1990年頃の時点でもう10年以上のデータやノウハウの、そして高価なソフトウェアの蓄積がありました。それをすべて捨ててしまったら過去の制約にとらわれない素晴らしいシステムを開発できたかもしれませんが、ビジネス全体で見たときにそれはコストが高すぎ、また未来の安定性に対する不安感ともなりました。
これを現在のIoTに当てはめて考えてみると、素晴らしい最新技術をつかった全く新しいスマート農業を活用した圃場を作るというよりも、今ある技術や今ある設備や今できることを少し拡張していく漸進的なアプローチとなるのではないかと思います。

スモールサイシング

「パソコン」はゲーム機として始まりました。その後ワープロや表計算などからビジネス分野に浸透していきましたが。どこまでいっても個人ツールであるという印象が抜けませんでしたし、それは事実でもありました。結局はおもちゃであり、本格的なビジネスには力不足のものであるというのはPCがずっと言われてきたことでした。しかし結果はPCの天下となり、大型コンピューターは駆逐されてしまいました。
これを現在のIoTに当てはめて考えてみると、大手ベンダーや大企業のシステムに頼るのではなく、従来型の開発者を使うということになります。結局大手のシステムは大規模であるがゆえに変化に対する柔軟性に乏しく、環境の変化に追随することができませんでした。世界を代表する大手ベンダーであっても環境そのものをコントロールすることはできなかったのです。
IoT、とくに農業分野はこの先普及することが確実視されている分野です。それは課題が切実だからです。しかし「だれが」「どのように」というのはまだ全くわかりません。現在大手に見えるところが10年後も大手であるかどうかは誰にもわかりません。ならば、環境の変化にたいして柔軟に変更できるという形で作るほうが現実的であると言えます。